波乗りジョニー
夜も深まりまして、こんばんは。
私です。
最近の話をします。
実況「初夏の風薫る8月。うだるような暑さのなかはじまりましたのはここ砧公園にて開催されていますビビりゴリラの独り言〜熱中症には気をつけて〜。解説、今日のみどころ、ズバリお願いします。」
解説「そうですね、異世界に放り込まれた彼女の行方、とでも言っておきましょうか。」
実況「そうこうしてるうちにビビりゴリラピットイン!まもなくスタートです!」
私の職場の先輩に33歳独身女性がいるのね。
実況「ここで審判タイムを要求!」
解説「33歳や釣りが好きなど、好きな人とその人との共通点を見つけてしまうと「(この人は絶対にいい人だ…)」という金融機関の金庫並みに分厚いフィルターができてしまうあの哀しきアイドルファンのあるあるネタですね。」
実況「お〜っと会場!首を縦に振るファン続出!やはりこの現象、避けては通れないのでしょうか!」
解説「そうですね、遠いとおもっていた存在がいきなり目の前に現れたことにより心の距離のはかりかたさえ忘れるというなんとも哀しき性…しかしなにが怖いって、これはすべて錯覚によって起きている現象なんです。」
実況「錯覚…?錯覚とは実況、どういうことなのでしょう!」
解説「彼女たちは普段すました顔で淡々と日常生活を送っているようにも見えますがじつは心のうちでは「(放課後の駐輪場で相葉先輩と鉢合わせしたらどうしよう)」「(残業終わりににのみや先輩とエレベーター一緒になったらどうしよう)」「(常連客のおおのさんに「今日はご飯じゃなくてお姉さんとお話ししにきたよ」って言われたらどうしよう)」といったことを考えているんです。つまり、どんな状況でも無表情の下では妄想が蠢いているので妄想力は桁違い。わずかな類似点からも妄想できてしまった結果、脳が麻痺して錯覚を起こしてしまうんですね。)」
実況「うちで燃え上がる侍魂…!深い…!深いですね!!」
〜再開〜
ある日の休憩時間、その33歳の先輩がごそごそとケータイをとりだして、その33歳の先輩とその友達が映った写メを私に見せながら、
「この子と私どっちが可愛いとおもう?」
ってきいてきたのね。くわえて、
「私の男友達ほんとヒドくてこの子のことブスっていうんだよね〜。ねぇねぇ、そう思う?」
実況「おっと語り部ゴリラ!自らタイムを要求!」
解説「嘘じゃないよ、大袈裟に言ってるわけじゃないよ、みんなお願い信じて、私マジでこれ本当に言われたんだよ、とのことでしょう。」
〜再開〜
え〜っと。う〜〜〜ん。
困っちゃうな〜〜!
ちょっと私薄々気づいてたんけど、たぶんこの世には親からも学校からも教えてもらえない「人に聞いちゃいけない質問」っていうのがあるよね?
阿吽の呼吸みたいなさ、暗黙の了解みたいなさ、なんかそういうやつ。
それを蹴破ってくるもんだから驚く。こんなん肝が据わってるでお馴染みの北斗晶でさえ動揺するやつじゃん。
それを社会人ほやほや右も左も分かりませんわみたいな私にきくんだよ?ぜってー先輩の友達のが好みっスとか言えねぇ
口が裂けても言えねぇ。つーか先輩の友達そうとう可愛いかんね。つーか先輩そこまで実況「セーーーーーフ!!!!!!!」
解説「危ないところでした」
実況「苦節32年、手探りでこの実況という生業と向き合ってきた私ですがこれほどまで焦ったことはありません。」
解説「おつかれさまです」
実況「これはこのまま彼女のターンに戻していいものなのでしょうか」
解説「実況がストップをかけたことにより彼女もすこし落ち着きをとりもどしてるといいのですが」
〜再開〜
「ちょっとMさん(33歳の先輩の名前をMと仮定します)、その質問いちばん難しいやつじゃないですか〜!」
あぁ、見渡すかぎりの砂漠地帯でローソンとか見つけたらこんな気持ちになるんだろうなっておもった。
私がワタワタしてたらN先輩がタイタニック号かな?ってくらいの豪華絢爛な助け舟を出してくれたわけ。もうね、すげー乗るよね。マジ安堵。これで今晩スヤスヤ眠れるわ〜つってさっきまで食べてたチョコレートをもう一口食べようとしたら、
「え〜?じゃぁNさんはどっちが可愛いとおもいます?この子と私」
落ちたし。ポロって
さっきまで食べてたチョコレートポロって落ちたし。目が点。・O・こんな顔でチョコレート拾って・O・こんな顔でふーふーして食べようとしたら先輩が、
「この子ですかね」
って。
意気揚々と乗った助け舟がかるく浸水。マジか。海猿呼んで〜
いやまぁね、しょうじき先輩の眉間にかるくシワよってんの私気付いてた。その7文字に込められてる気持ちとかわかりすぎるほどわかれてたし、なんなら「(これが社会の荒波か…)」ってかるく悟りの境地に達してた。ら、
「ゴリラさんどう思う?どっち?」
微笑むことでしかその場をやりすごす術を知らない私にコレ聞きますかって話し。隙を与えず聞いてくる。
もう、なんか、ネバーギブアップ精神が異常すぎてドリカムかと疑う。私はあなたの1万1回目にはなれねーぞ。つーかね、私だって一応自分を好きになろうとか自分を愛そうとかそういう道徳的なことを学んできましたけど、それほどまで純粋にその言葉を真摯に受け止めてこの女という笑顔と殺気に満ち満ちた土俵でその質問ぶつけてくるとか命知らずすぎんだろうがこのピュアピュア星人め!
実況「…………………………」
解説「…………………………」
実況「ピュアピュア…星人………」
解説「ファンタジーで包んだただの悪口ですね」
実況「ビビりゴリラ、肩で息をしています………言ってしまったというような顔をしています………」
解説「彼女のなかのなにかが崩れた音が聞こえましたね……」
〜再開〜
鼻をにょきにょき伸ばしながら「先輩ですかね?」って、語尾の?に最高の熱き思いを込めて結局私は1対1を選ぶわけです。
我ながらいい後輩だ。
今んとこ感じてる社会の荒波が高潮すぎて桑田佳祐でさえも乗りこなせそうにないやつだから私のなかでの世渡り上手サイボーグ説が有力になりつつある。
最後だから言うけど「その質問33がするのにはキチィ」って思っちゃったからおおのさんもアイドル大野智という括りから脱したらただの人間なんだと改めて痛感。
いやでもおおのさんに「俺とこの人どっちが好き?どっちがかわいい?ねぇどっち?」って聞かれたら「そんなのおおのさんに決まってるよぉぉぉおぉぉぉぉおぉぉおぉぉぉぉおぉぉおぉぉぉぉおぉぉおぉぉぉぉおぉぉおぉぉぉぉおぉぉおぉぉぉぉおぉぉおぉぉぉぉおぉぉおぉぉぉぉおぉぉおぉぉぉぉおぉぉおぉぉ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」って全力で即答できちゃうから盲目。天秤の重さが常にこっち。潔い。
夜が明けた。
素晴らしい世界がまたはじまった!
寝る!